人は何十年もの間に、さまざまなライフステージを迎えます。家に住んでいる間は特に、家族が増えたり、巣立ったり、親としてもさまざまな成長や変化を迎えながら年を重ねてゆくことでしょう。子どもを見守り、送り出すだけではなく、自分自身も何か前に進んで行くために変化を迎えるのは自然な流れになります。住宅のリフォームやリノベーションは、そうした転機へ踏み出すためにも有効な手段です。今回ご紹介するのは、新たに購入した築10年の家を、茶事を教える空間を持つ住まいへリノベーションした物件です。伊東建築計画室が現代のノーマルな家を和風の趣がある家へと変身させました。
外壁は塗壁へと改修され、格子や庇が加えられた和風の趣のある佇まいに変身しました。知人から譲り受けたといわれる門をつけると、たちまち改修後の住宅とは感じさせないほどの風情があります。外壁が明るい色になったことで、新鮮さと味わいを感じる外観に変身しています。
ビニールクロスの内装を撤去し、塗壁や畳などの内装へと一新されました。広い土間や框、ミニマルな花を生けるスペースも設けられ、中へ入った瞬間から和風の香りを感じることができます。季節の茶花や設えを玄関へ入ったときから感じることで、ゲストやお稽古に来られた方々に楽しんでいただけるような空間になりました。
和室とはいえ、ビニールクロスなどが施されていた内装はすべて塗壁へと一新され、住まい手が解体する家から譲り受けた和の古材が忠実に再現されました。欄間や床柱、落し掛、障子など、歴史のある部材は現代において新しいものはなかなか手に入れることは難しくなりました。年を重ねて風情や味がある部材や茶室は、元の洋が混じった和室とは感じられないほどの趣を感じる空間へと生まれ変わりました。
まっさらの状態だった庭と外部は、新たに設けられた茶室の空間とつながりをもつように路地や待合が作られ、庭自体にも蹲や石をあしらった茶庭に生まれ変わりました。茶道では室内だけではなく、茶事の際には外部からのアプローチが伴って一つの儀式が行われます。一連の流れをすべてつながることができるよう、丁寧に動線や景色が計画されています。室内から外部を見ても、まるで以前の状態を感じさせないような趣き深い空間は心が洗われるようです。このリフォームをきっかけに、日本の美しい茶道の文化が受け継がれていくことに喜びを覚えます。
リノベーションについては、こちらの記事でも紹介しています。
※ 新築vsリノベーション。比較することで見えてくるそれぞれの良さ
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